第70回富山眼科集談会 ミニ発表
- 開催日:2014年6月29日
- 開催場所:富山国際会議場
-
演題 富山県における2013年度献眼実績報告 演者 原 由香利(富山県アイバンク)
入江真理(富山県アイバンク)
林 篤志(富山大学医学部眼科)
発表スライド
富山県アイバンクでの、2013年度献眼実績を報告する。
【対象】
2013年度の、献眼登録者、献眼者、移植者が対象。
登録者リスト、眼球摘出記録および移植記録をもとにして調査。
【結果】
◆登録者◆
年間の登録者数は、全体で183名となった。前年の約2倍だった。これは、ライオンズクラブがクラブメンバーに登録推進運動をした結果である。
[登録者の性別] 男性121名・女性62名で、2:1の割合だった。
[登録者の年代]図の通り、どの年代からも万遍なく登録をいただいている。中でも、40代の登録数が一番多かった。
◆献眼者◆
2013年度の献眼者は24名だった。
[献眼に至った経緯] 献眼登録11名・意思表示カード1名・家族の忖度4名・口頭での意思確認8名だった。献眼登録や意思表示カードといった書面による意思表示が、ちょうど半数となった。 また、富山大学附属病院における献眼意思確認システムをはじめとした、医療関係者による口頭での意思確認も増えてきている。
[献眼者の性別]男性18名・女性6名で、男性が3/4を占め、偏りがみられた。
[献眼者の年代]80歳以上の献眼者が半数だった。 最年少は1歳、最高齢は103歳で、平均年齢は73.8歳だった。
[献眼者の死因]悪性腫瘍・心不全・肺炎が多いことは例年通りだったが、これまで悪性腫瘍についで多かった脳血管障害がなかった。
[献眼場所]1件を除き全て病院でおこなわれた。設立から2013年度末までで一番多く摘出に行ったのは、富山大学附属病院の柳沢秀一郎先生で50回出動していただいている。
[摘出眼の内訳]摘出眼数は48眼だった。内、40眼は移植にもちい、また2眼は角膜内皮細胞数が少なかったため保存している。その他6眼の内、2眼はHCV陽性・2眼は結膜培養で緑膿菌陽性であったため移植にもちいることができませんでした。 残り2眼は、摘出前の所見で角膜実質層に混濁みられたが、強膜移植を目的として眼球を提供された。
[献眼者の内皮細胞密度] 摘出眼48眼のうち、内皮細胞密度測定が可能であった45眼を対象とした。
対象となった献眼者の年齢は、1歳から103歳で、平均73.8歳だった。
内皮細胞密度は867セル/㎟から4831セル/㎟で、平均2815.7セル/㎟だった。
◆角膜移植者◆
2013年度の移植者は40名だった。
[移植者の性別]男性17名・女性23名と、女性の方が多かった。
[移植者の年代]70歳以上の移植者が70%だった。最年少は23歳、最高齢は95歳で、平均年齢は献眼者より4歳ほど若い69.4歳だった。
[移植者の疾患]水疱性角膜症が最も多く16人だった。ついで角膜混濁が8人だった。
[角膜のあっせん施設]富山県アイバンク医学基準を準拠して、あっせんをおこなっている。
富山大学附属病院が最多の12眼だった。他、東海北陸4眼・関東4眼・関西2眼・四国8眼・九州6眼にあっせんした。新鮮で移植できる角膜は全て、新鮮で移植した。
◆強膜移植◆
[強膜の保存について]強膜は2分割にし、エタノールに浸してマイナス80度で保存している。昨年度は献眼者24名中12名の24眼を分割し、48個の強膜片を保存した。
今後、あっせん件数が増えることが予想されるため、4分割で保存していく予定である。
[強膜移植者の性別]強膜移植者は32名だった。内、27名(84%)が男性だった。
[強膜移植者の年代]60歳以上の移植者で75%を占めた。年代として多かったのは、70代だった。最年少は20歳、最高齢は89歳だった。
[強膜移植者の疾患と術式]32例中31例が緑内障のチューブシャント手術だった。他1例は、眼外傷による穿孔を塞ぐため移植された。これらのあっせん先は全て富山大学附属病院であった。
【まとめ】
富山県アイバンクにおける2013年度の登録者は183名・献眼者は24名・移植者は40名で、強膜移植は32例行われた。
献眼者数は、前年より減少しているが、長いスパンで見ると増加傾向にある。 これは、主治医をはじめとした医療関係者が、口頭での意思確認をしてくださっていることが大きな要因の一つだと考えている。
▲[このページのトップへ戻る]
発表スライド
はじめに
1963年に「角膜の移植に関する法律」が施行され、日本において心臓死者からの提供による角膜移植が始まった。 同年より全国各地にアイバンクが設立され、献眼登録活動が開始された。 富山県においても1991年にバンクが設立し、活動を開始した。
・十分な提供者を確保する
・安全な角膜を提供する
・ 公平、公正に斡旋する
のアイバンクの三原則を基本理念として活動を行ってきた。 十分な提供者を確保するために、全国のアイバンクが長年かけて献眼登録活動を行ってきた。 しかし、その登録の意思が十分に生かされていない現況の中、ドナー数を増やすには、病院におけるOP提示が必要であるということがわかってきた。 当県においても、ドナー増加のためには、心停止後の「献眼に関する意思の有無を伺うシステム」を導入する必要があると考え、活動の拠点である富山大学附属病院においてこのシステムの導入を行ったので報告する。
富山大学附属病院は、富山市内から少し離れた富山大学杉谷キャンパス内にあり、1979年富山医科薬科大学附属病院として診療開始した。 2005年、大学統合により、富山大学附属病院に名称を変更した。
病床数612床、特定機能病院として先進医療AならびにBを提供する病院で、 また、全国初の6歳未満の小児の脳死臓器提供病院でもある。
富山県アイバンクは医学部棟の4階に事務局を構え、献眼の一連の作業をこの部屋で行っている。 また、大学病院との連携も取りやすい状態にある。
導入方法と開始時期について
平成24年1月、臓器移植委員会において、システム導入を提案され、また病院運営会議においても導入について協議され、決議された。 それを受けて、アイバンクのコーディネーターが各医局をまわり、システム導入についての説明会を実施した。また、看護師長への説明会も合わせて実施した。
具体的な実施方法について
入院患者さんが死亡された場合、HBs抗原・HCV抗体が陰性かつ白血病・敗血症ではない患者様ご遺族に対して、主治医が死亡説明をされる際に、「この病院ではすべての患者様の献眼の意思を確認している。アイバンクの方に来てもらってお話を聞くことができますがいかがですか?とご遺族の意思を確認してもらい、OKされた場合にアイバンクに連絡をするという方法で実施した。
結果
平成4年度から平成23年度までの平均年度献眼者数は1名だったが、平成24年度は5名、平成25年度は4名、平成26年度も4名、平均年度献眼者数4.3名となり、システム導入により献眼者が増加したが、平成27年度は献眼者数0名となってしまった。
年度別ドナー情報数について
平成24年は情報数が8件あり、そのうち献眼に至ったのが5件だった。平成25年は情報数は5件、献眼は4件。平成26年は平成25年と同数だったが、平成27年は情報数、献眼ともに0件だった。
意思確認別ドナー情報数について
平成24年は意思確認5件、家族の申し出3件 平成25年は意思確認4件、家族の申し出1件 平成26年はすべてが意思確認による情報数だった。 残念ながら平成27年は情報数は0件だった。
考察
本システム導入により献眼数が増加した。しかし昨年度は情報数は0件だった。 大学病院においては、各医局の先生方の移動が多く、また、新しい医師も入局し、本システムを知らない先生方もおり、継続的に医局会にて説明を実施する必要があると思われた。
▲[このページのトップへ戻る]
Copyright (C) 2021 SITE NAME All Rights Reserved. design by tempNate